M・マクルーハン「グーテンベルクの銀河系」

概要

聴覚文化と視覚文化

本書ではまず、聴覚文化と視覚文化が設定されている。聴覚文化は非文字文化であり、視覚文化は文字文化だけれども、その徹底したかたちが印刷文化だ。(47ページ)
そして、「均質性、画一性、反復性」が文字文化の特徴だとする。そのなかでマクルーハンが強調するのはアルファベット文化、表音文字を用いる文化の特色だ。
ギリシャ文化について次のようなことをいっている。
「このような言葉(形式論理学・科学にとって必要不可欠な正確な言葉)は、記号ならざる一般の言葉からさえも、視覚的要素だけを残してほかの要素のすべてを排除することで成立するような言語でもある」」(93p)

反復という性質と応用知識

有限なアルファベットの反復によって、自然が写生される。これは自然を抽象化して、反復可能なものにしている。量的に無限で、無限に多様にも思える外界の対象を、みずからのうちに内化、つまりコード化していくこと、これが文化だとマクルーハンはいう。(119)そして、その技術として「画一化と複写反復の技術」122がある。
こうした歴史の発展のなかで、画期的だったのが活版印刷の発明であり、それは「均質にして反復可能な<商品>」「最初の大量生産方式」だという。(192)
この結果として経験が細分化され、それにともない、伝統的工芸も細分化され、さまざまな社会的な仕事を専門化する「応用知識」が生み出され、近代につながっていく。(411)

グーテンベルクの銀河系

つまり、表音文字の特色として、「均質・画一・反復」する記号の組み合わせとして世界を表現しうる、ということがある。これを視覚化したのが、グーテンベルクの印刷術だといえる。つまり、活版印刷では、均質で画一な活字を文字通り段組みにして、それが終われば「崩されて元の活字箱に収まってしまう」。ここから「均質な空間」と「視点」からの展望が強調される、「透視画法的視点」が生じる。(173)ここから「地図」も新しい形になる。(「リア王」の地図)(19)
この分割が伝統的工芸に適用されると、「応用知識」として専門化が生じ、また人間に適用されると「画一的な国民生活」「中央集権主義的政府」と「個人主義」「反政府的態度」という、二つの方向性を生むことになる。(358)

けれども、そのような時代も今や(出版年は1962)終わりつつある、という。
すなわち、現代の科学は視点をはなれている。
「今日の科学はひとつの視点にむけられて努力を積み重ねたりはしない。むしろいかにして視点を持たないかに努める。それは閉じられた系と透視図の方法ではなく、開かれた「場」と判断停止の方法である。」420p
それはホワイトヘッドにより「発明の方法の発明」とよばれたもの、「一連の操作の終点から始め」「そこから開始点へと逆にさかのぼって作業を進める」技術である。また文学の世界でも、ポーの作品や、意識の流れの作品として、グーテンベルクの遺産から自らを開放する方向にすすみはじめている、と指摘される。

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